合同会社つくりえ代表 塚田敬子さん

彩の国と呼ばれる「埼玉県」。愛称のとおり、みなさんの「個性=Color」によって埼玉県は「彩られて」います。先人から伝わる伝統を受け継ぐ人。埼玉から新たな革新を起こす人。文化・芸能・スポーツなど様々な分野で様々な色を生み出しています。そんな埼玉県の「これまで」と「これから」を彩る方々を新たな視点で紹介する「Painters!」。是非ご覧いただき、あなただけの「Color」を見つけてください。

<塚田敬子さんPROFILE>

塚田敬子(つかだけいこ)
合同会社つくりえ代表
茨城県神栖市生まれ。(現在はさいたま市在住)
高校卒業後インターンを経て26歳くらいまで美容師として働く。その後、3年半美容師としてカナダへワーキングホリデーしたことをきっかけに改めて日本の良さを知り、日本の技術、伝統、和の美しさに興味を持つ。
帰国後、出産するまで美容師として働き、その後、合同会社つくりえを立ち上げ、手作りのあたたかみや日本の文化などを伝えている。
現在は、「つくりえ」の活動を通じて知り合った様々なものつくりをしている作家さんたちの作品の展示・販売会の実施、またSNS等で発信し、手作りの良さ、和のこころを広める活動に尽力している。
受賞歴 「埼玉県伝統工芸品等新製品開発コンテストIMPACT SAITAMA2017」 優秀賞

interviewer:木村亜希子

木村亜希子

木村亜希子(きむらあきこ)
JCOM株式会社
広島県に生まれ、埼玉県在住30年(現在はさいたま市在住)。
全国66の拠点で地域密着の放送を行うケーブルテレビJ:COMチャンネルの広告営業部に所属し埼玉県を担当。
また、埼玉県の伝統工芸などの地域資源プロモーションや県内企業様の映像制作・イベントの協力も実施。地域に根付いた広報活動に尽力している。
子育てもひと段落し、愛犬との散歩や県内ドライブが休日の楽しみ。また、埼玉の美味しいものや地酒を楽しむなど、埼玉県を日々満喫している。
現在所属するJ:COMは埼玉150周年記念事業パートナーに登録しており、番組などを通して埼玉県の魅力を発信している。

ー日本の何もかもが嫌で、逃げるようにカナダに移住したんですー

木村:塚田さん、お久しぶりです。今日はよろしくお願いいたします。

塚田さん:はい、こちらこそよろしくお願いいたします。

木村:塚田さんとは、「つくりえ」で出展された「恋文-KOIBUMI-」が、「埼玉県伝統工芸品等新製品開発コンテストIMPACT SAITAMA 2017」で優秀賞を受賞された時以来のお付き合いですよね。
今日はこうやって改めてお話を伺える機会なので、幼少期から遡って、どうやって現在まで来られたのか、お聞かせいただければと思います。

塚田さん:はい、ちょっと照れくさいですが(笑)。
よろしくお願いします。

木村:ではまず、小さい頃はどんなお子さんでしたか?

塚田さん:特に活発だったわけでもなければ明るかったわけでもなく、本当に普通の子だったと思います。
これといった趣味もなかったんですが、強いて言えば、お裁縫は好きだったかもしれません。犬のお洋服を作ったりとかしてましたから。小学校2年生まで祖父母と一緒に暮らしていて、日々の生活の中で当たり前のように手芸や園芸が営まれているのを見て育ったので、その影響が強かったんだと思います。

木村:元気に外を駆け回っていたような幼少時代をイメージしていたので、ちょっと意外です。
当時はどんな仕事に憧れていましたか?

塚田さん:田舎でしたし、どんな職業が世の中にあるかもわかっていなかったので、特にこれといってはありませんでした。
だけどまだ進路を決めあぐねていた高校2年生の頃に、実家が理容室だったこともあり、通信制の美容師の学校だったら、親がお金を出してくれるということになったんです。それで、まぁ国家資格だし、とりあえずやってみようと。正直、実家の理容室もあまり好きではなかったので、始めはそれほどやる気もなかったんですが、いざ勉強を始めてみるとけっこう楽しくて。無事に美容師資格を取得し、しばらくは美容師として働いていました。
だけどその頃はまだ若くて、常に色んなことに反発していたんですよね。日本のしがらみも嫌でしたし、日本人の右へ倣え的な気質もしきたりも、もう何もかもが嫌で嫌で。それでワーキングホリデーを利用して、逃げるようにカナダに移住してしまったんです。

ー祖父母と暮らした毎日の中にこそ、日本の素晴らしさがあったー

木村:カナダでの生活から、どのようにして今のお仕事に結びついていったんですか?

塚田さん:現地の方々ともコミュニケーションを取るようになってから、すごく驚いたことがあったんです。それは、みなさんとても日本についてよく知っているということ。特に日本が好きな方は本当に色々なことをご存知で、私なんかよりずっと詳しいんですよ。
その一方で、しっかりご自身の国について語ることもできる。だけど私は、日本の良さを知ろうともせずに飛び出してきてしまいましたから、何も語ることができませんでした。それがとても恥ずかしくて悔しくて、改めて、日本の良さってなんだろう、って考えたんです。
そこでハッと気づいたんですね。小学2年生まで一緒に暮らしていた祖父母の生活の中にこそ、日本の素晴らしさがあったんじゃないかって。お裁縫をしたり、盆栽の手入れをしたり、書道をしたり、当たり前のように生活に馴染んでいた祖父母の日々の営みこそ、私が世界に語るべきことなんじゃないかって。カナダに移り住んで3年半くらい。一時期は移民申請することも考えていましたが、そこで日本に戻ってきました。

木村:カナダでの気づきが、日本に戻ってきた原因だったと。
それから今の事業を始めたきっかけはなんだったんですか?

塚田さん:一緒にカナダに移住していた現在の夫が、前々からお店をやりたいと言っていたんですね。まぁ私自身はあまり関心なかったんですが、あるとき彼に、「さいたま市ニュービジネス大賞」の説明会に参加してきてほしいと頼まれて行ってみたら、それがすごく面白かったんです。
特にそこに参加している方々が、みなさん自由な発想を持っている方たちばかりで、すごく居心地が良かったんですよね。それで俄然やる気が出てきて、実際に「ハンドメイドと飲食スペースのあるコミュニティカフェ」というビジネスプランを書いて応募したら、なんと最終まで残ったんです。自ずと自信もついて、さらにそれまでずっと地道に経営の勉強をしていた夫の姿も見ていたので、これはもう自分たちでやってしまおうと。それからすぐに物件を探し始めて、たまたま見つけた盆栽町のスペースを借りて、「つくりえ」という名前でお店をオープンしたんです。

ー火事という出来事は不運でも、それが縁となり、企画が完成したー

木村:すごい行動力ですね!だけどその半年後に事件が起きてしまう、と。

塚田さん:はい。色々な作家さんとのやり取りも増え、商品も充実し、いざこれからという時に、お店が火事になってしまったんです。扱っていた商品は、ほぼ全焼。出火元はウチではなかったものの、とにかく作家さんたちに申し訳なくて申し訳なくて・・・。
おひとりずつに事情を説明して回りました。それからしばらくは茫然自失としていたんですが、次第に、何人もの作家さんたちからお手紙が届き始めたんです。それらのほとんどが励ましのお言葉で、みなさん「物はまた作れば良いから」って仰ってくれました。
もう本当に感動しましたし、すべてのお手紙から勇気をいただき、救われた思いでした。と同時に、手紙ってなんて素敵なんだろう、と感じたんです。だって単にメッセージを伝えるだけならLINEひとつで済むところを、みなさんおひとりずつが私たち夫婦のことを想いながら、封筒を選び、便箋を選び、そこに手書きで文字をしたためてくれているんですから。その想いの深さを感じた時に、「手紙という文化を残したい、この素晴らしさを伝えたい」と強く感じたんです。

木村:それが、「和紙と桐箱のお手紙セット 恋文-KOIBUMI-」なんですね。

塚田さん:そうです。この作家さんたちに気づかせていただいた、「手紙」という「想いの文化」をなんとか後世にも残るカタチにしたいと思い、そこからとにかく手紙について調べました。
するとまず見つけたのが、昔は宿屋でも商店でも、帳簿や顧客リストを和紙に書いていたわけですが、もしも火事になった際には、その大切なリストを井戸に投げ入れたそうなんですよ。そして火が収まった頃に井戸から引き上げるんですが、和紙って元々水に強いので、しっかり乾かせばリストが復活するというんです。「これは絶対に和紙を使いたい!」と思いさらに調べてみると、埼玉県小川町に、小川和紙という伝統工芸があることを知りました。
早速その職人さんにコンタクトを取る一方、じゃあそれをどうやってパッケージしようかとまた色々調べていくと今度は、かつては桐箪笥も、大切な着物を火事から守ってくれるものとして重宝されていたことを知ったんです。また火事か!と思いつつ、桐箱だったら春日部が有名なので、今度は春日部の桐箱職人さんにお話を聞きに伺いました。そうしてできたのが「恋文-KOIBUMI-」です。思えば、確かに火事という出来事は不運でしたが、結果としては、それがきっかけで生まれた不思議な縁に導かれた企画でもあったんですよね。

ーだから日本が好きなんだ。そう言える日本人を増やしたいー

木村:その後も「和モダンな手仕事」というコンセプトで伝統工芸品をアレンジしていくわけですが、その裏にはどんな想いやテーマがあるんですか?

塚田さん:「恋文-KOIBUMI-」のときもそうでしたが、まずは「失われそうな伝統を後世まで残したい」という想いが第一です。
だけどあまりにも生活からかけ離れている国宝級のような伝統工芸品にはリアリティが感じられないし、そもそもユーザーさんにも届きにくいと思うので、あくまでも日常生活の中で身近な範囲内の伝統工芸品を、今の時代に合うようにモダナイズして残していければ、と考えています。

木村:なるほど。素敵な想いですね。その先に見える夢みたいなものはあるんですか?

塚田さん:カナダに住んでいた頃、私自身がそうなりたいと感じたことでもあるんですが、「だから自分の国が、だから日本が好きなんだ!」って胸を張って言える人が増えたら良いな、とは思いますね。
それは必ずしも「和」の要素に限ったことじゃなくて良いと思います。だけど日本人ってやっぱり、ブームに流されやすかったりするじゃないですか。時代に敏感なこと自体は悪いことではないですが、そこにもう少し、日本人ならではの芯のようなものを持った人が増えてほしいですね。

木村:今その話を聞いて思ったんですが、日本人の中でも埼玉県民って、「埼玉大好き!」っていう方が多い気がしますよね。
昔から埼玉県ってディスられがちだけど、県民性として、それに負けないメンタルを持った人が多いというか・・・。

塚田さん:あ!確かに!そうかもしれませんね。
特に伝統工芸の職人さんたちは、そういった気概が強い人が多い気がします。

木村:埼玉県内で他に思い入れのある伝統工芸はありますか?

塚田さん:越谷の籠染めですね。
残念ながら籠染め自体は、もう工房がすべて閉じてしまって残っていないのですが、その中でも最後の最後まで続けていた工房で使われていた型を再利用し、灯籠を作っているデザイナーさんがいるんです。その作品がとにかく美しくて素晴らしいのと同時に、もう失われてしまった伝統工芸ですが、少しでもその輪郭を残そうという活動自体に、とても感銘を受けています。

ー座右の銘は、「なるようになる」ー

木村:では伝統工芸から少し話を広げて、埼玉県全体についてはどんな印象をお持ちですか?

塚田さん:そうですね。ひとことで言えば、ちょうど良い場所ですよね、埼玉県って。
例えばさいたま市は大都会で都内にもすぐ出られるけど、少し移動すれば公園や自然もたくさんある。都会と自然がすごくいい具合で融合している場所だと思います。
個人的には、この盆栽町の辺りがとても好きですね。盆栽美術館から大宮公園、氷川神社、氷川参道までを繋ぐルートは、外国の方々にもオススメできると思いますよ。

木村:確かに、駅からすぐで、こんなにも文化に触れられる場所も少ないですよね。
では今後、埼玉県がどのようになって欲しいですか?

塚田さん:今のままでも大好きなので、特に大きな変化は望まないです。市や県の取り組みにも概ね賛成できているし、子育てもしやすいし環境も良いですし・・・。
なので、このまま変わらず、常にちょうど良い埼玉県がずっと続いてほしいです。

木村:本当に埼玉県がお好きなんですね。
では最後に、これから起業を目指している埼玉県の女性に向けてメッセージをお願いします。

塚田さん:女性って、仕事に打ち込む時期や家庭に入る時期、子育てに集中する時期など、その時々で周囲との関係も暮らし方も変わることが多いじゃないですか。なんていうか、求められる役目が変わるというか。
だからその瞬間の流れや感情だけに全力投球してしまうと、いつか続かなくなってしまう時も来るんじゃないかと思うんですよね。なので、もちろん一生懸命やることは大切だけど、必要以上に頑張りすぎないで、少し力を抜いて、ゆっくり長い目で続けていけば良いんじゃないでしょうか。

木村:それ、すごくわかります!
確かに女性って頑張り過ぎちゃう面もありますからね。私自身にも言い聞かせようと思います(笑)
そんな塚田さんの座右の銘とは?

塚田さん:大したものではないんですけど・・・。「なるようになる」、ですかね(笑)

木村:なるほど(笑)
それを聞いて、今までのお話すべてに合点がいったような気がしました。
今日は貴重なインタビュー、本当にありがとうございました!

塚田さん:こちらこそ、ありがとうございました!

\ズバリ!埼玉県を色で例えると?/

赤色

私が好きなアクセントカラーでもあるんですが、赤って強いじゃないですか、元気も出るし。
埼玉県って、そういうエネルギーを感じるんですよね。控えめだけどパワーがあるっていうか。県章の色もそうですし、私の中ではやっぱり、埼玉=赤ですね

編集後記

木村さん
久しぶりに塚田さんにお会いしましたが、変わることなく、パワフルで、かわいらしくて、笑顔の素敵な女性でした。
起業後まもなくの火事での店舗全焼。落ち込んで何もできなくなるような出来事も、たくさんの方々からの手紙をいただいたことや、小川和紙と桐箱の方々との出会いも「火事」がつないでくれたご縁と捉えて、新商品「恋文」を制作し、結果「埼玉県伝統工芸品等新製品開発コンテストIMPACT SAITAMA」優秀賞受賞の作品となったことなど、マイナスをプラスに転じていけるパワーがあると感じました。
「なるようになる!」最後に伺ったこの言葉は、自分にとても響きました。
日々生きていく中には辛いこともありますが、前を向いて歩いていくことで良い方向へと変えていけるんだなと目の前の塚田さんから教わりました。
とてもがんばり屋な塚田さん、お仕事も、子育ても大変ですが、御身体に気をつけてくださいね。
これからもご活躍を祈っております。またぜひお会いしたいです。

編集後記

今回のロケ地

さいたま市大宮盆栽美術館

さいたま市の盆栽文化振興の核となる施設として、さらに「大宮盆栽村」観光の拠点施設として、世界に誇る盆栽の名品や盆栽に関わる美術品、歴史・民俗資料等を展示している。 季節ごとに異なる表情を魅せる、生ある芸術品「盆栽」は女性や若い世代にも人気が広がっている。
ストレスの多い現代社会、日頃の疲れをホッとひといき癒しに行きませんか?

https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/

さいたま市大宮盆栽美術館

さいたま市大宮盆栽美術館