こころMOJIアーティスト 浦上秀樹さん

彩の国と呼ばれる「埼玉県」。愛称のとおり、みなさんの「個性=Color」によって埼玉県は「彩られて」います。先人から伝わる伝統を受け継ぐ人。埼玉から新たな革新を起こす人。文化・芸能・スポーツなど様々な分野で様々な色を生み出しています。そんな埼玉県の「これまで」と「これから」を彩る方々を新たな視点で紹介する「Painters!」。是非ご覧いただき、あなただけの「Color」を見つけてください。

<浦上秀樹さんさんPROFILE>

浦上 秀樹(うらかみ ひでき)
こころMoji artist
1973年2月9日 埼玉県上尾市生まれ、春日部市在住。
1993年 21歳の時、筋肉が徐々に減少していく進行性の病気、遠位型(えんいがた)ミオパチーを発症。すべての感覚はあるものの動かしたい意思があっても腕・足など動かすことに筋肉を必要とする部分をほとんど動かせない状態。
2010年4月 口に筆をくわえて「こころMoji」を始める
国内各地で個展やパフォーマンス等を披露。
※こころMoji:漢字に別の意味を持つひらがなを組み合わせ、新たなメッセージを生み出すアート

主な作品
夏川りみ20周年記念アルバムジャケットに「風」提供
「ひと文字のキセキ」PHP研究所より出版
「星野富弘美術館」星野富弘と浦上秀樹作品展

interviewer:木村亜希子

木村亜希子

木村亜希子(きむらあきこ)
JCOM株式会社
広島県に生まれ、埼玉県在住30年(現在はさいたま市在住)。
全国66の拠点で地域密着の放送を行うケーブルテレビJ:COMチャンネルの広告営業部に所属し埼玉県を担当。
また、埼玉県の伝統工芸などの地域資源プロモーションや県内企業様の映像制作・イベントの協力も実施。地域に根付いた広報活動に尽力している。
子育てもひと段落し、愛犬との散歩や県内ドライブが休日の楽しみ。また、埼玉の美味しいものや地酒を楽しむなど、埼玉県を日々満喫している。
現在所属するJ:COMは埼玉150周年記念事業パートナーに登録しており、番組などを通して埼玉県の魅力を発信している。

ーとにかく、自分で文字が書ける、何かを創り出せることが楽しかったー

木村:以前から『こころMoji』を拝見していたので、今日はとても楽しみにして参りました。改めて、本日はよろしくお願いいたします。

浦上さん:はい、よろしくお願いいたします。

木村:浦上さんはご出身が上尾市で、現在は春日部市に在住だそうですね。ずっと埼玉県にお住まいですが、小さい頃はどんなお子さんでしたか?

浦上さん:普通の子どもだったと思いますよ。身体を動かすのが好きだったので、スポーツをしたり、虫や魚を捕まえたり。大体いつも外で遊んでましたね。

木村:埼玉県は自然も豊かですから、そういう外で遊ぶことが好きなお子さんには、ぴったりの場所ですよね。現在浦上さんが創作されている『こころMoji』は、2010年の4月から始められたとのことですが、どんなきっかけでやってみようと思われたんですか?

浦上さん:それ以前から、漢字の中に平仮名を当てはめた作品を創ってらっしゃる方がいたんですよ。その方の本を読んでから、「自分でもやってみたい」という気持ちが湧いてきて、見よう見まねで始めたのがきっかけです。

木村:そうだったんですね。それから今まで続けてこられた理由は?

浦上さん:それまでは自分で文字を書くことができなかったのですが、その本をきっかけに、筆を口に咥えてでも文字が書けるということがわかったんです。それから、自分で文字が書ける、何かを創り出せるということがとにかく楽しくて、今もまだずっと続いている感じです。だから正直言って、今の状況には少し驚いています。ただ趣味として楽しいから書いていただけで、人に見せようとも思っていませんでしたし、ましてや展示をしようなんて、まるで考えていませんでしたから。それがいつからか、「面白い」とか「感動した」とか言っていただけるようになって、最初は本当に不思議でしょうがなかったですね。

木村:えー!それは意外です!私も今日改めて作品を拝見して、何かこみ上げてくると言うか、心の中のモヤモヤした感情が洗い流されたよう気持ちになっていたんですが……。

浦上さん:残念ながら、そういうのは狙ってないんですよ(笑)。むしろ、自分が想ったままを表現しているだけなので、心の中を見られているような、恥ずかしい気持ちの方が大きいです。

ー漢字が言葉を選んでくれるー

木村:浦上さんの『こころMoji』が素晴らしいのは、ひとつの漢字をいくつかの平仮名で構成することによって、より深い意味合いやメッセージが生まれている点だと思うのですが、そこに至るまでの過程としては、まずテーマとなる漢字から決めていくんですか?

浦上さん:そうですね。基本的には先に漢字を選びます。それから、その漢字から連想することを片っ端から挙げていくんです。例えばお風呂の中やトイレに座っているときなど、日常の中で『ぼーっ』としている瞬間などに、ふとその漢字が書いてある光景をイメージして、そこから出てくる平仮名の言葉を漢字の中に落とし込んでいく、という作業ですね。もちろん、最初からピタッとくることは少ないので、ハマる言葉が出てくるまで順番待ちをしているような状態です。そういう段階を経てから出てきたピタっとくる言葉は、その漢字がその言葉を選んだような感覚なんですよね。やっぱり、こちらの都合で選んだ言葉を入れようと思っても、どうしてもカタチ的に無理が出てきて、僕の漢字のカタチが崩れてしまうので。だから言葉が入ったときには、自分の中でもまだその繋がりがわかっていないことも沢山あります。それでも、その漢字と平仮名の言葉との繋がりや解説を考えていく中で、「あ、そういうことだったのか」と気付かされることも多いですね。

ー最後まで諦めず、可能な限り続けたいー

木村:今後の目標や夢はありますか?

浦上さん:先程も言いましたが、文字を書くこと自体が楽しいので、少しでも長く続けていきたいですね。私の病気は進行性で、これまで、やりたかったことを諦めてきたことも多いので。だからこの『こころMoji』だけは、最後の最後まで諦めず、可能な限り書き続けていきたいと思っています。

木村:それはきっと、小さい頃から活発で、やりたいことに挑戦されてきたという過去があるからこそ、その気持がずっと続いているんですね。聞いたところでは、この『福だるま』は、制作に135時間もかかったそうですね。

浦上さん:はい。時間があったので(笑)。

木村:とても繊細な色使いの点描ですが、これはすべて計算しながら?

浦上さん:いえ、そこまで深くは考えていないです。色彩のある点描って、必然的に色が重なりキレイに見えるので、誰でもそれなりに見えると思いますよ(笑)。

木村:そうなんですか?とてもそんな風には見えませんけど(笑)。作品には黒一色のものから、この『福だるま』のようにカラフルなものまでありますが、これは何か意味をもって書き分けているんですか?

浦上さん:メッセージ性などの意味は特にないんですけど、元々、黒文字メインで書いていた中で、色をつけた方がより文字をイメージしやすいんじゃないかと思い、カラフルな作品も書き始めました。漢字がわからない小さいお子さんにも、色から入って楽しんでもらえたらな、と。それと同じく海外の方々にも興味を持ってもらえるように、ただ既製の漢字を書くだけでなく、カタチも崩して書くようにして、作品としてのデザイン性にもこだわっています。

ーやってもダメならもっとやるー

木村:浦上さんの中で最も気に入っている作品はなんですか?

浦上さん:このコロナ禍においてマッチしていると思うのは、『福-ふつうのこと-』ですかね。だけど、やっぱり一番初めに書いた『感謝』という文字が、自分の中では大切な言葉です。

木村:拝見しました。『感謝』という文字の中に、『であいといのち』という言葉が入っていて、とても心に刺さりました。あの文字が一番初めに書かれた作品なんですね。

浦上さん:そうですね。シリーズで幾つか書いていますが、題材としては一番初めの作品になります。あれを超えるものは、自分の中でまだ生まれていないですね。

木村:作品と離れた場所で、何か好きな言葉、座右の銘のような言葉はありますか?

浦上さん:『やってもダメならもっとやる』かな。元々の性格がしつこいんですよ、きっと(笑)。やり始めたことをやめることができない性分で、どうしてもやり遂げたいというか、やり通したいという気持ちが強いんですよね。

ーそれぞれが自分の個性をもっと生かして、未来を作ってもらいたいー

木村:ではここからは、埼玉県についての想いをお聞かせください。浦上さんが埼玉県で好きな部分は?

浦上さん:昔はあまり感じなかったのですが、大人になって思ったのは、まず都内に出やすいっていうところ。それでいて自然豊かで、それこそ田舎のような場所にもすぐに行ける。そういう、都会なのか田舎なのかわからないような、あやふやな部分が好きですね。それと災害が少ないので安心感もあって、全体的にとても暮らしやすい街だと感じています。

木村:本当にそうですよね。そんな埼玉県が150周年を迎えますが、今後、どのようになって欲しいですか?

浦上さん:基本的には、今のままでも十分いい街だと思っているので、それほど多くは望んでいません。だけど強いて言うなら、自分が車いすだということもあり、もっと福祉に関しての整備が進んでくれると嬉しいかな。これは埼玉県に限ったことではありませんが、車いすで出かけると、どうしても広いトイレが必要になるんですよ。だけどまだまだ、どこにでもあるというわけではありません。だからこそ、埼玉県が他の都道府県に先駆けて、より誰もが暮らしやすいようなインフラ整備に注力してくれると、これからの多様性の時代をリードしていけるようになるんじゃないでしょうか。

木村:では最後に、そんなこれからの時代を作っていく次世代の方々にメッセージをお願いします。

浦上さん:伝えたいこととは少し違うかもしれませんが……。僕はいつも、人間は一人ひとり違う個性を持っているはずなので、それをお互いが分かち合って認め合うことで、誰もがもっと暮らしやすい社会になるんじゃないかと思っています。だからこれを読んでいるみなさんも、もっとそれぞれの個性を生かしながら、より良い未来を作っていってもらいたいですね。

木村:深く刺さりますね。浦上さんの作品で、『色』という漢字の中に『こせい』という言葉が入っているものがありましたが、今、すごく合点がいきました。浦上さん、本日は貴重なお話、ありがとうございました。

浦上さん:こちらこそ、ありがとうございました。

\ズバリ!埼玉県を色で例えると?/

黄緑色

多分、うちの目の前が田んぼだからだと思いますが、黄緑色ですかね。濃い緑ではなく、青々とした稲の色のイメージです。

編集後記

木村さん
お会いする前は、とても緊張していたのですが、奥様や周りのスタッフの方から「口下手なんでよろしくお願いしますね」「なんでも聞いていただいて大丈夫です!」と、温かいお言葉をいただき、安堵しました。さらにその時の浦上さんの茶目っ気のある笑顔と、「木村さん、よろしくお願いいたします!」と、お名前を呼んでいただいたことがとても嬉しく、『こころMoji』同様に優しさに包まれたようでした。
この『こころMoji』は、浦上さんはもちろん、周りのスタッフの皆さまの楽しむ気持ちもあって作られているんだろうな。と感じられました。
個展もとても素敵な作品が多く、また家族や友人を連れて訪れたいなと思いました。ぜひ、埼玉県内に、浦上さんの『こころMoji』記念館、作っていただきたいです!埼玉県様、いかがでしょうか?(笑)
このたびは、お時間をいただき、本当にありがとうございました。
また、皆様とお会いできますことを楽しみにしております。

編集後記

今回のロケ地

埼玉会館

大小ホール、展示室、会議室を備えた施設。
コンサートのほか、演劇、ミュージカルの公演、映画の上映、講習会、研修会など、多目的に利用できる。
また、建築物としても定評があり、日本のモダン建築の巨匠と言われる前川國男氏が設計。敷地内には色彩感のあるタイルを敷き詰めたエスプラナード(遊歩道)がめぐらされており、その手書きにより緻密かつ繊細な設計書から生み出された模様は、建物の上から見ると美しく花が咲いたような様相を見せてくれる。

埼玉会館

埼玉会館